第76回全国都市問題会議の会議概要報告
1 日 時 平成26年10月9日・10日 2 会 場 高知市 高知県立県民文化ホール 3 主 催 等
(1)主 催 全国市長会
公益財団法人 後藤・安田記念東京都市研究所 公益財団法人 日本都市センター
高知市
(2)協 賛 公益財団法人 全国市長会館
(3)参加議員 佐藤議員、古屋議員、木原議員、松本議員、江口議員 山本議員、門倉議員、大沢純一議員、瀬議員
梅田議員、大石議員 (11名) (4)随行・報告者 議会事務局次長 五十嵐
4 進行内容 (1)1日目 ア 開会式
(ア)開 会 挨 拶 全国市長会会長 長岡市長 森 民夫 氏 (イ)開催市市長挨拶 高知県高知市長 岡﨑 誠也 氏
(ウ)来 賓 祝 辞 高知県知事 尾﨑 正直 氏 イ 基調講演
(ア)テーマ 「生き方雑記帖2014」 (イ)講 師 作家 山本 一力 氏 ウ 主 報 告
(ア)テーマ 「新たなコミュニティの構築をめざして」 (イ)報告者 高知県高知市長 岡﨑 誠也 氏
エ 一般報告
(ア)テーマ 「コミュニティ政策と都市内分権」 (イ)報告者 法政大学法学部教授 名和田 是彦 氏 オ 一般報告
(ア)テーマ 「市民の力を活かしたまちづくり」 (イ)報告者 青森県八戸市長 小林 眞 氏 カ 一般報告
(ア)テーマ 「コミュニティ再生をめざす市民による拠点整備」 (イ)報告者 早稲田大学社会科学総合学術院教授、建築家、都市
(2)2日目
ア パネルディスカッション
(ア)テーマ 「都市と新たなコミュニティ」
~地域・住民の多様性を活かしたまちづくり~ (イ)コーディネーター
Sutudio-L代表
東北芸術工科大学教授
京都造形芸術大学教授 山崎 亮 氏 (ウ)パネリスト
一般社団法人コミュニティネットワーク協会理事長 近山 惠子 氏
群馬大学大学院教授
群馬大学広域首都圏防災研究センター長 片田 敏孝 氏 高知市まちづくり未来塾代表
岡田 法生 氏 東京都三鷹市長
清原 慶子 氏 福岡県宗像市長
谷井 博美 氏 イ 閉会式
(ア)次期開催市市長挨拶 長野県長野市長 加藤 久雄 氏 (イ)閉会挨拶 後藤・安田記念東京都市研究所理事長
新藤 宗幸 氏 5 基調講演の概要【1日目】
高知生まれの作家、山本一力氏による「生き方雑記帳2014」と題した「自
己責任について」をテーマとした基調講演が行われた。概要は以下のとおり である。
(1)米国を旅行したとき、自由と自己責任を基本とする米国社会を体験した (2)米国と比較すると日本社会は、甘やかしすぎではないかと考える
(3)現在、日本では、住民は行政に対し、際限なく要求を続ける、かつては そうではなかった
(4)自分が子どものころ、川遊びをする子どもに対して、当時の大人は「泳 ぐことについて止めはしないが、深みにはまって溺れても誰も助けないぞ」 と言い、自己責任を諭すような対応をしていた
あてにできるほど甘くないということを子どものころから徹底的に叩き 込まれてきた
(6)現在の状況を見るとどこかで、勘違いが起きたのではないかと思う
(7)個人がわがままを言い募るのではなく、本分というものをわきまえて生 きていく、そのことを社会が教えていくべきと考える
6 主報告の概要【1日目】
高知市長の岡崎誠也氏による主報告のテーマは「新たなコミュニティの構築 をめざして」であった。概要は以下のとおりである。
(1)高知市のコミュニティへの取り組みは、昭和40年代後半から本格的に 始まり、20年ごとの大きな流れがある
(2)最初の20年では、市内の一部の地域に行政が本格的に入りながら、住 民と一緒に今後のモデルとなるコミュニティづくりに取り組んできた
(3)次の20年では、「高知市総合計画-1990-」において、コミュニティ計 画を総合計画と相互補完する行政計画として位置づけ、これまでの取り 組みを全市的に広げ、市内28地区でコミュニティ計画を策定した
(4)市内28地区でのコミュニティ計画策定にあたっては、一般公募の「コ ミュニティ計画策定市民会議」を組織し、28地区、1,300人の市 民の参加があった
(5)市民と行政とを結ぶパイプ役として、庁内公募による若手職員を中心と した11チーム106人の「まちづくりパートナー」が各地区における 計画策定に加わり、市民参加のサポート役を担った
(6)28地区のコミュニティ計画策定を通して、地域との協働という形が定 着し、コミュニティ計画に基づき、まちづくりを進めていくための「高 知市市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例」が平成15年に 制定された
(7)近年、全国的に人口減少、少子高齢化が問題となり、地域コミュニティ の継続性が危惧されている中、高知市においても様々に顕在化してきた 地域課題への対応に迫られている
(8)平成22年度から「地域コミュニティの再構築」に取り組んでいる
(9)高知市のこれまでの取組の中では、地域での活動を支え、それぞれの課 題を解決に導いていくために大切なものは、「人」であり、「人と人との つながり」である
(10)行政においては、地域・住民の活動等への支援はもとより、行政内部
7 一般報告の概要【1日目】
法政大学法学部教授の名和田是彦氏による一般報告のテーマは、「コミュニテ ィ政策と都市内分権」であった。概要は以下のとおりである。
(1)コミュニティへの政策的関心が高まっているが、その志向は質、量共 に大きくなってきていると考える
(2)国や自治体においては財政余力が乏しく、公共サービスの組織と提供 において、地域コミュニティの力を借りなければならないという状況が ある
(3)地域コミュニティの主力となるはずの自治会・町内会に、加入率の低下 などによる弱体化が生じている
(4)これまで、自治会・町内会が法制度的な枠組みを持たないにもかかわら ず、地域運営が可能となっていたのは、当該地域の住民全員を会員にして いるからである
(5)自治会・町内会の地域の中に会員でない人が出てくると、この民間的地 域運営は機能しなくなる
(6)自治会・町内会の加入率は、高度経済成長期以降、長期低落傾向にあり、 近年では、加入率の低下はさらに加速され、危機的な状況にあるといえる (7)自治会・町内会の持つ地域運営の機能回復については支援が必要となっ
ている
(8)これまで全く民間原理に委ねていた身近な地域社会の組織化(自治会・ 町内会)を何らかの形で法制度的な枠組みの中に取り込むことが必要であ る、このことが都市内分権である
(9)都市内分権とは、次のような仕組みのことである
ア (合併によって大規模化した)市町村の区域をあらためて(合併前の 市町村の区域を目途に)区分し、
イ そこに役所の出先(またはコミュニティセンターのような集会施設、 事務局機能、あるいは地区担当の市役所職員の派遣など)を置き、 ウ そこに(場合によっては選挙制の)住民代表組織を付帯させる (10)都市内分権は、コミュニティ政策の一つのツールとして用いられてい
る
8 一般報告の概要【1日目】
青森県八戸市長の小林眞氏による一般報告のテーマは、「市民の力を活かした まちづくり」であった。概要は以下のとおりである。
(1)八戸市は、平成17年度に「八戸市協働のまちづくり基本条例」を施行 し、他の先進自治体に学びつつ、さまざまな取り組みを行ってきた
る八戸」を構築するため、多くの市民がボランティア活動に参加しても らえる環境整備に取り組んできた
(3)行政活動におけるボランティアは、平成25年度には、32事業で、延 べ44,753人となっている
ア 市民病院での患者の案内
イ 「認知症サポーター養成事業」におけるサポーター
(4)行政活動以外のボランティア活動の代表的なものとして、近年国立公 園に指定された「種差海岸(たねさしかいがん)」の環境保全(清掃活動、 外来植物の駆除、観光ガイド)があげられる
(5)平成18年度から「八戸市協働のまちづくり基本条例」に基づき、市 長が各公民館に出向き、地域住民と地域のまちづくりについて意見交換 をする「住民自治推進懇談会」を開催している
(6)「住民自治推進懇談会」は、市に対する要望の場ではなく、地域で何が できるのかを考える場である
(7)「住民自治推進懇談会」での意見交換から具体的な協働事業に発展した 例として、市が材料を提供、工事は地域の住民、建設会社が協力して行 った「中学校のグランド改修」がある
(8)地区公民館を核とした地域振興策の一つとして、「地域と行政のつなぎ 役」として市職員を配置し、地域づくり支援や広聴窓口の業務を行う地 域担当職員制度を平成20年度より導入している
(9)東日本大震災時、行政の支援が困難な状況下で自主防災組織や連合町 内会、町内会が地域住民の避難誘導や避難所運営などに大きな役割を果 たした
(10)震災後、地区担当の職員を再編、避難所に行政の情報が伝わらないと
いうことから、世帯担当の職員を置き、世帯単位で情報提供していく仕 組みを作った
(11)東日本大震災により「自分たちの地域を自分たちで守る」ためには、地
域住民、団体の連携が必要不可欠であることが再認識され、震災前には7 1組織64.9%だった自主防災組織の組織率が、震災後は85組織79. 9%まで上昇した
9 一般報告の概要【1日目】
早稲田大学社会科学総合学術院教授、建築家、都市デザイナーの卯月盛夫氏 による一般報告のテーマは、「コミュニティ再生をめざす市民による拠点整備」 であった。概要は以下のとおりである。
(2)全国のそれぞれの地域には、そこにしかない風景がある。それをまちづ くりに仕立て上げることが望ましい
(3)建築の専門家として学んできた。日本の公共建築は、莫大な費用をかけ て整備されてきたが、その空間を有効に使っているかどうか疑問を持って いる。つまりコミュニティの形成に役立ってきたのかということである
(4)巨大な公共建築がコミュニティを破壊してしまったのではないかと考え る
(5)今後、都市整備の予算は縮小し、福祉関係の予算を充実させなければな らない
(6)福祉の環境整備の際、考えなければならないのは、福祉インフラであり、 これには物的・人的両面が含まれる
(7)都市整備と福祉の2つが合わさることにより、本当に必要とされる公共 建築ができるであろう
(8)近年、日本全国で人口減少とともに空き家・空き店舗・未利用地が増え ており、これらの物的資本は利用されていない
(9)地域には、高齢者や子どもなどの人的資本は存在している
(10)社会関係資本を生かし、3つの資本を結びつけることが重要となる (11)都市の中に、みんなが自分の居場所だと考える共通の空間を作る必要が
ある
(12)この拠点整備は基本的に民間の役割であり、行政は制度・仕組みを作 るなどの側面支援をすることが望ましい
(13)市民が主体となった空間整備がコミュニティの活性化につながってい る
10 パネルディスカッションの概要【2日目】
Sutudio-L代表、東北芸術工科大学教授、京都造形芸術大学教授の山崎亮氏を
コーディネーターとして、「都市と新たなコミュニティ~地域・住民の多様性 を活かしたまちづくり~」テーマに行われた。
パネリストは、一般社団法人コミュニティネットワーク協会理事長の近山惠 子氏、群馬大学大学院教授、群馬大学広域首都圏防災研究センター長の片田敏 孝氏、高知市まちづくり未来塾代表の岡田法生氏、東京都三鷹市長の清原慶子 氏、福岡県宗像市長の谷井博美氏以上の5人。概要は以下のとおりである。
最初にコーディネーターの山崎氏より、次のような問題提起がなされた。
(1)自治体のコミュニティづくりにおいては、人口10万人を境に内容が変 わってくるように感じる
(3)人口10万人以上の場合は、自治会の加入率が下がり、地域でその機能 が発揮しにくくなってきている傾向にあり、既存のコミュニティの再生と いうタイプの取り組み。または、自発的に結成される組織やテーマに沿っ て形成されるコミュニティづくりが主体となる
次にそれぞれのパネリストからの事例報告が行われた。
最初に人口10万人以上である三鷹市の事例報告が清原市長から行われ、続 いて、人口10万人以下である宗像市の事例報告が谷井市長から行われた。そ の後、地縁型、テーマ型のコミュニティづくりを意識した活動を行っている近 山氏、片田氏、岡田氏からそれぞれ報告が行なわれた。
(1)清原市長の報告
コミュニティの再生の取り組みから、民学産公の協働で行う少子高齢 化に適応する新たなコミュニティづくり
(2)谷井市長の報告
小学校区単位のコミュニティ運営協議会の設置、そこへの権限・財源 の移譲
(3)近山氏の報告
ア コミュニティネットワーク協会の活動を紹介 イ 完成期医療福祉という考え方
ウ 居住福祉という考え方 エ 100年コミュニティ構想 (4)片田氏の報告
釜石市で取り組んできた子どもへの防災教育を紹介、防災とコミュ
ニティの関わり、コミュニティの崩壊はコミュニティへの所属の動機づ けの欠如
(5)岡田氏の報告
高知市のコミュニティ計画に基づく取り組み「よこせと・まちづく り市民会議」の紹介
以上のパネリスト報告を受け、ディスカッションが行われた。
コーディネーターの山崎氏から、地縁型・テーマ型などさまざまなコミュニ ティが出てくると、それを調整するコーディネーターが必要となり、そのコー ディネーターには次の3つが考えられるとのこと
(1)プロデューサー、民間人あるいは首長自身がその役割を担う
(2)調整役となる狭義のコーディネーター、行政職員が担う場合も考えら れる
(3)会議の司会進行等を行う地域のリーダー
基調講演の「自己責任とは」に始まり、高知市の主報告、一般報告では、コ ミュニティづくりの事例が紹介された。
パネルディスカッションでは、さらに、形態の違うコミュニティづくりが紹 介され、その後のディスカッションの中で、それぞれにコーディネーターが必 要との指摘があった。
現在、自治体における課題は、行政サービスを実施する上で、いかに効率的 かつ有効的に実施し、住民の満足度を高めるかということと考えるが、そのた めには、単にサービスを行うだけではなく、そこには市民との協働が必要であ り、その協働を醸成していくには、行政がどのようにコミュニティづくりを実 施していくかということが要となってくる。